今年も残りあとひと月。
毎月更新をした“今月の旅の本”も1年が経ちました。
旅行が簡単に行けなくなった事をきっかけに読み始めた旅の本も、探せば探す程、読みたい本が増えている状態です。
少しずつですがこのブログでも紹介し続けたいと思います。
幻獣ムベンベを追え/高野 秀行 著
本のあらすじ
コンゴの山奥に太古より生息していると言われている謎の生物「怪獣モケーレ・ムベンベ」。
その生態や発見に挑む早稲田大学探検部11名の無謀で前途多難な密林サバイバル生活40日間。どんなに事前の準備をしても、現地に赴いたらどうなるかは全くわからない。それこそが冒険。
感想
著者のデビュー作。大学在住時代にアフリカのコンゴの奥地、テレ湖に住むと言われる怪獣モケーレ・ムベンベを探す旅に出た冒険記。早稲田大学の探検部の噂は何度か聞いたことがあったがここまでとは…! チンパンジーやゴリラの肉を食べる。マラリアによる熱で倒れる友人。想像を絶する情景が目に浮かぶ、これが全てノンフィクションとは! この本を読んでも同じような冒険をしようとは思えない。おもしろかった。
雪男は向こうからやって来た / 角幡唯介 著
本のあらすじ
ヒマラヤの山中に暮らす謎の雪男という生物。その探索に情熱と人生を注いできた人たちがいる。
探索隊に同行することとなった著者は60日間に及ぶ捜索期間の中で、雪男を探す彼らが体験した奇妙な体験とは。果たして雪男の姿を捉えることができるのか。
感想
雪男を探す冒険記というよりも、雪男に取り憑かれた人たちに焦点を当てた物語。いるわけがないと蔑まれ馬鹿にされていた人間たちの気持ちを汲み取りながらも、雪男がいるという現実的な証明を聞き込み、調査し、客観的に語る。自分が雪男に選ばれるかどうか。 いたら浪漫があるだろうなとか思っているぐらいじゃ僕も選ばれない人間なんだろう。 この本を通じて、熱中する人の中に雪男が確かにいた気がする。
美麗島紀行 / 乃南アサ 著
本のあらすじ
美しき、麗しの島「台湾」。数奇な運命を辿ったこの島に魅せられた著者が、台湾各地を歩き、人々と語り合い、その素顔に迫る。
ある時代は同じ国民として、現在は良き隣人として台湾を見つめ書き綴っていくことで、彼らの面影にかつての日本の姿を見つけることも。歴史と人に寄り添った珠玉の紀行エッセイ。
感想
「かつて日本人でした」そう言われるとなんだか近いようで遠くに感じる台湾の人たち。 同じ敗戦を経験しているが、戦争を境にお互いの国に急に分けられた人々。 アニメ映画のモデルになったとされる旧市街地や小籠包をはじめとする中華料理に魅了される人気の観光地。台湾に対する表面的なイメージしか知らなかった。この本を読むことで台湾の歴史やなぜ、台湾の人たちが親日家と言われるのかが分かった気がする。 台湾を知ることで日本の歴史を学ぶことになるとは思いもよらなかった。何とも言えない気持ちです。
スーツケースの半分は/ 近藤史恵 著
本のあらすじ
30歳を目前にした真美は、フリーマーケットで青いスーツケースに一目惚れ。憧れのニューヨークへの一人旅を決意するが、過去の不安が蘇る。そんな時、鞄のポケットから見つけたメッセージが背中を押してくれた。
やがてその鞄は、友人たちに手渡され世界中を巡り、”幸運のスーツケース”と呼ばれるようになった。青いスーツケースが運ぶ新しい自分との出会いを贈る短編集。
感想
青いスーツケースによって繋がれていく幸せの旅物語。リレー形式の短編集。日々の生活で感じる心の中のモヤモヤの正体を旅先で感じることがある。そんな時、救われるのもまた旅の中のエピソードだったりする。 最後には世界中を駆け回る中で、幸せを運んできたスーツケースのルーツを辿る話もあり、読後感が良かった。 旅に出たくなる、ちょっぴり背中を押してもらえる一冊です。
Voyage 想像見聞録/ 宮内悠介 他
本のあらすじ
物語という旅へ出かけよう!行動の制限がかかり、日常の生活に変化が及んだ。そんな時にもでも大丈夫。私たちには小説があった。
最旬の作家たちが、国境や日常、現実を超えて想像の世界へ飛び立つノベル・ジャーニー。
- 対馬と韓国の距離は1時間。その1時間がどうしても遠かった。「国境の子」宮内悠介
- 旅公演のスタッフとして遠征中にみた月が胸に残る「月の高さ」藤井太洋
- ある時から自転が止まった地球。昼を追いかける船と半年ずれた日記。「ちょっとした奇跡」小川 哲
- 移動式の宿・水星。彼らの宿に泊まるお客とは?「水星号は移動する」深緑野分
- あの夏、最後の家族旅行の悲劇が私の人生を変えた。「グレーテルの帰還」森 晶麿
- 突然、地表が動き出す。世界を変えたシャッフルに抗う姉弟「シャカシャカ」石川宗生
感想
旅をテーマにしたアンソロジー。SF風な作風が多く、個人的に好みな話が多かったです。 コロナウイスルによって行動を制限されたとしても、僕たちには本がある。作家さんたちの手によって、想像の旅を広げていくことができる素晴らしいノベル・ジャーニーでした。 個人的な好みは、「グレーテルの帰還」。
最後に
最初にお伝えした通り、2021年もあと僅か。
朝晩の冷え込みが厳しいですが、お体にお気をつけてお過ごしください。
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